源氏物語

第二帖 帚木

第一段

光源氏、名のみことことしう、言ひ消たれたまふ咎多かなるに、いとど、かかる好き ごとどもを、末の世にも聞き伝へて、軽びたる名をや流さむと、忍びたまひける隠ろへご とをさへ、語り伝へけむ人のもの言ひさがなさよ。さるは、いといたく世を憚り、まめだ ちたまひけるほど、なよびかにをかしきことはなくて、交野少将には笑はれたまひけむか し。

まだ中将などにものしたまひし時は、内裏にのみさぶらひようしたまひて、大殿には 絶え絶えまかでたまふ。忍ぶの乱れやと、疑ひきこゆることもありしかど、さしもあだめ き目馴れたるうちつけの好き好きしさなどは好ましからぬ御本性にて、まれには、あなが ちに引き違へ心尽くしなることを、御心に思しとどむる癖なむ、あやにくにて、さるまじ き御振る舞ひもうち混じりける。

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